オーロラは、太陽風が地球の磁場にあたって発生する自然現象です。太陽は、電気を帯びた陽子や電子などの荷電粒子プラズマを常に放出しています。太陽から強風のように吹き出したプラズマは、地磁場とぶつかった勢いで地球の後ろに引っ張られます。それがまた引き戻されるときに、極地の空気と衝突して発光するのがオーロラです。
 

 
強い太陽風が発生すれば、季節や時間帯、気温に関係なく、2〜3日後にオーロラが出現しますが、昼間や極北の白夜の時期には空が明るすぎて見えません。また、星が見えないほどの曇天や、雨、雪の日にも見えなくなります。オーロラが見えるか見えないかは、レベルよりも天候に大いに左右されるのです。
 
 

オーロラは、その日によって強さや大きさが異なります。弱いものは肉眼で見えないことが多く、白い雲か煙のように目に映ります。人工の光に慣れすぎた人間の目には、オーロラのかすかな緑が見えないのですが、正しく設定したカメラには鮮やかに写ります。オーロラかどうか判別できないときには、必ず写真に撮って確認しましょう。
 

一眼レフでなくても、近頃ではコンパクト・デジカメの上位機種なら十分撮れます。星空モードでも写りますが、カメラの操作を覚えて、本格的なオーロラ撮影に挑戦してみましょう。
 

 

カメラの設定

暗い夜空に出現するオーロラは、オートモードではきれいに撮れません。F値、ISO感度、シャッター速度の3つが設定できるマニュアルモード(M)を使います。
 
F値(絞り値)を小さい数字にすると、レンズを通る光量が多くなるので、明るく撮れます。カメラの性能によって最小値は2.0〜3.5と決まっているので、選べる範囲で最も小さな数字に設定しましょう。
 
ISO感度を大きい数字にすると、暗い場所や動きの速い被写体でも明るく写りますが、数字を上げ過ぎると画像の仕上がりが粗くざらついた感じになります。
 
シャッター速度(露光時間)の秒数を上げると、レンズに光が通る時間が長くなるので、暗いところでも明るく撮れますが、手ブレしやすくなります。
 

オーロラは遠い天空に出現するので、ピントはマニュアル設定で無限遠 ∞ にして、星や月に合わせます。

オーロラの状態と設定 F値 ISO感度 シャッター速度
暗めで動きが静か 最小値 800〜1600 6〜15秒
明るく動きが激しい 最小値 400〜800 1〜5秒

シャッターを押すときの振動で手ブレするので、セルフタイマーを2秒に設定しておきましょう。
 

三脚

レベルの高いオーロラは激しく動くので、写真がブレないように撮影時には三脚を使いましょう。ミニ三脚は手軽ですが、雪におおわれた場所でのオーロラ撮影には適しません。最低でも50~60cmは伸ばせる三脚を選びましょう。
 

三脚を固定したまま、カメラの設置部分だけが自由に動かせる自由雲台、三脚からカメラをワンタッチで外せるクイックシューがあると便利です。
三脚には最大荷重が決まっています。カメラ本体の重さ+約1kgを目安にして、ぐらつかず安定した三脚を選びましょう。
 

バッテリー

オーロラの撮影地は野外で、冬は気温が零下20℃になることもあります。寒いところではバッテリーがすぐに消耗するので、撮影しないときには電池をポケットに入れて、カイロで温めておきましょう。交換用の予備バッテリーがあると安心です。
 

撮影の練習

せっかくオーロラが出現しても、カメラの使い方がわからなければ上手に撮れません。夜景や星空など、暗い夜空を撮る練習をしておきましょう。星がきれいに撮れるようになれば、オーロラもしっかり写せます。
 

凍結・結露対策

5本指の先が出せる手袋があるとカメラを操作するのに便利ですが、極寒時には三脚の金属部分を素手で触らないようにしてください。指がくっついて離れなくなります。カメラ用にミトンやニット帽、カイロも用意しましょう。撮影しないときにはカメラにかぶせて凍結を防止します。
 
極寒の屋外から暖房のきいた屋内に移動するときに、冷え切ったカメラをそのまま持ち込むと内部が結露して故障の原因になります。屋外でカメラをニット帽に入れて、さらにチャックが二重のジプロックに入れて、袋の口をしっかり閉じてから入室しましょう。袋を開けるのはカメラが室温に戻ってからにしてください。
 
万が一結露してしまったら、絶対に電源を入れないでください。カメラ内部の基板に水滴がついた状態で電気が通ったら、ショートして完全に壊れてしまいます。
 

月明かり

オーロラだけでなく周囲の風景も入れて撮影してみてください。木々や山並み、地平線を入れることで、オーロラのダイナミックさが表現できます。
 

一般に新月の晩が最適とされていますが、月明かりはまわりを均等にやわらかく照らし出すため、風景が浮かび上がり美しく写ります。ただし、月そのものは撮影範囲に入れないように。オーロラの色がきれいに出ず、写真の質が低下してしまいます。
 

携帯電話

携帯電話についている一般的なカメラ機能は、センサーサイズが小さすぎるため、オーロラ撮影には適しません。最新機種であれば、星空やオーロラが撮れるアプリもあります。ただし極寒の環境では、バッテリーが瞬時に減るので気をつけましょう。