哀愁を帯びた南米ペルーのフォルクローレや、インドのくねくねした音楽、低く重く響くアフリカンドラムなど、店内に流れる民族音楽がこの店の品々の故郷を語っています。木や石や布など自然素材のぬくもりが店内の穏やかな空気になじんでいて、なんとも居心地のいい空間。



刺繍の入った写真立てや手作りのアクセサリー、民族色豊かなクリスマス飾りなどが並びます。どれもひとつずつ手間暇かけて丁寧に作られたものばかり。



誕生日やクリスマスのプレゼントを選ぶ時、私たちは贈る相手のことを考えます。どんなものだったら喜んでくれるかな、この色なら気に入ってくれるかな。では、そのプレゼントを作った人のことは? どんなところでどんな人が作っているのか、ひとつ作ったらその人にはいくら支払われるのか。大量生産、大量消費の流れの中で、見失いがちな視点です。



1946年、キリスト教慈善団体メノナイト中央委員会で働くエドナさんはプエルトリコに赴きました。そこでは現地ボランティアが社会の底辺にいる女性たちに職業訓練として針仕事を教えていました。



でも作るだけでは、彼女たちの生活は向上しません。そこで彼女は作品を米国に持ち帰り、友人たちに販売することに。その素朴で温かみのある手作りの品は好評を博し、パキスタン難民が作った刺繍細工やハイチの手工芸品なども仕入れることにしました。



1970年、自宅の地下室で続いていたこのささやかな活動は、メノナイト中央委員会の正式プロジェクトとして認められ、エドナさんの手を離れて大きく広がり始めます。寄付を集めて発展途上国に送るのではなく、その国の人々が経済的に自立できるように支援するのが主な活動趣旨です。

1996年には非営利団体テンサウザンド・ビレッジと名称を改め、開発途上国30カ国の生産者グループと連携し、フェアトレードの精神を強調した活動になりました。北米にある180以上の店舗は、すべてボランティアによって運営されています。



フェアトレードとは公正な売買のこと。先進国にいると、そんなのは当たり前と思いがちですが、実際に私たちが手にする安い輸入品には、労働者の人権を踏みにじるようにして作られたものが多数あります。



昔、私が皮革製品の専門商社で働いていた時のこと。新製品の製造を請け負ってくれる工場を探して、現地を視察しました。暑く蒸れた空気をかき混ぜる送風機がぶんぶんうなる中、10歳くらいの少女たちがびっしり並んだミシンの前に座っています。

朝6時起床、7時就業、昼食は30分、夜8時の終業まで働き続ける女の子たち。手洗いに立つのは午前午後の2回と決められ、少しでも手を休めると罰金をとられます。

渋る経営者を説き伏せて従業員寮にも入りました。工場裏に立つ殺風景なコンクリートの建物には、ずらりとドアが並びます。裸電球の下がる長細い部屋に3段ベッドが4つ。窓にもドアにも鉄格子があり、鍵が外側についています。消灯後に逃げ出さないように南京錠をかけるのです。

その会社は日本との取り引きに慣れていて、品質の割には単価が安く魅力的な取り引き相手でしたが、どうしても心に引っかかるものがありました。契約にためらい労働条件を問題にすると、経営者は声を荒げました。

「辺境の貧しい村で農民は生活にあえいでる。一家の稼ぎ手として娘たちに職を世話し仕送りさせてるんだ。読み書きもできないあの子らを放りだしたら、堕ちていく先は決まってる。人助けでやってるようなもんだ」と胸を張る経営者。その手首に光る高級ブランドの腕時計に目を留めて、私は契約を考え直すと告げて席を立ちました。



貧富の差、教育の差、世界経済や流通システムの歪みにより、貧困に追いやられている人々。彼らが誇りを取り戻して平等な立場で取り引きできるようにするのがフェアトレード。



テンサウザンド・ビレッジは、生産者に公正な賃金を支払い、必要なら代金を前払いし、継続的に発注しています。また、現地の資源と伝統技術を活用しながら、先進国の消費者に受け入れられる商品作りも指導しています。産地の環境のことも考えて作られたフェアトレード製品は、生産者にも地球にも、それを身につけたり食べたりする私たちにもやさしいはずです。



自分の村で仕事があれば、出稼ぎして大都市のスラムに暮らしたり、低賃金や劣悪な労働環境に苦しむこともなくなります。フェアトレードで生計が成り立つようになり、井戸を掘ったり、下水施設を整えたり、学校を建てたりして生活基盤を築き始めた農村もあります。子供たちが学校で読み書きを覚えれば、それが地域の発展につながり、尊厳をもって暮らせる人々がもっと増えるでしょう。



フェアトレードを選ぶことは、政府の開発援助や慈善団体の寄付より、直接的で持続可能な支援の方法。人を思いやり温かい気持ちで贈り物を選ぶ時こそ、その心を広い世界にも分かち合いたい。理想主義だと笑われても、小さなことから世界は変わるんだと信じていたいから。

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